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  • お弁当への想い

私は「タナカショク」で20年間、健康的な食材にこだわりをもって豆腐を作り売ってきました。営業とか工場長とかもしてきたんですが、直接お客様の声を聞く機会がない、というのは不満でした。豆腐の場合、商品がスーパーに並ぶか並ばないかは、バイヤーさんによります。バイヤーさんが「他の豆腐でもっと安いものがある」と言われたら、そのスーパーには並びません。お客様に気に入ってもらう前に、まずバイヤーさんに買ってもらわないと話がはじまらないわけです。 
35歳になったある時、「仕事のやりがいはなんですか?」「やってて楽しいことはなんですか?」と問われました。考えた結果、答えは二つ。一つ目は、お客様に喜んでもらうこと。二つ目は、仲間から「助けてもらってありがとう」という言葉をもらうこと。特に、ものづくりをする時、消費者との距離は私にとって大事でした。これまで食品に携わってきて、「料理」が一番お客様に近い。自分が一生を使ってやりたいことが見つかったのにもやもやしていましたが、40歳になった時、専務の職を投げてゼロになる覚悟で、「今しかない!」と決めました。いろいろと反対もありましたが、「チャレンジしてみよう」という気持ちを形にするため、2006年に法人化しました。

実はスタートは、「タナカショク」がやっていた事業を引き継いで、岡豊高校と追手前高校の食堂の運営からでした。ところが、学校は1年のうち半分くらいがお休みなので、考えた結果、弁当をつくろうと思いました。お弁当屋は大きな資金も入らず、家庭用の調理器具があれば誰でも参入できるんです。でも、簡単そうですが、できては消える業界でもありました。会社名には、Eは「employs」で社員の満足、Cは「costumers」で顧客の満足、それをクリエートしていくことを込めています。お客様に満足してもらう仕事をするためには、まず社員のやりがいをつくるのが先なので、モノ、サービスを作り出す社員の満足を得た上で、お客様の満足をつくりだしたいと思っています。
6年目を迎えた2011年、新しい工場のある事務所に移転しました。現在は、日替わり弁当をメインに1日450食ですが、目標は1日1000食です。

「家族に食べさせたいお弁当」がテーマで、出来あいのものにしてしまうと何を使っているかわからないので、お弁当には できるだけ高知の野菜、お米を使っています。また、安全で おいしい食品であることは大前提なので、豆腐をつくっていた 時と同様、「卵」、「塩」、「水」の3つはこだわって選んでいます。たまご豆腐を開発する際に知った県内のある農場の卵は、青汁の 原料・ケールを餌にやったり、自然なエサを混ぜて育った鶏です。 夏場、鶏が食欲をなくして黄身が白っぽくなる時期は、ウコンを 食べさせ黄身の色を保っています。調理で使う水は電解還元水を、塩は天日でつくられたものを使っています。その食材のこだわりが、高知生協の夕食宅配事業につながりました。コープも安全なもの、地元のものにこだわっていて、食に対する考え方が一緒でした。一人暮らしのお年寄りや、カロリーや塩分をおさえた食事をしたい人に対して、健康や食のお手伝いをしたいと思っています。

私たちの仕事は、笑顔と健康をお届けする仕事。それを、お弁当や食事を通じてやっています。ただのお弁当屋とは思っていません。食事のひと時を少しでも楽しんでもらおうと、お弁当にオリジナルの掛け紙を巻くようにしています。たとえば、サッカーの練習試合にお弁当の注文をいただいた時は、サッカー選手の似顔絵と「夢を持つことを大切にする」といったメッセージを書いた掛け紙をつくりました。他にも、保育園の茶話会のお弁当だと、写真を載せたり、そこで歌う歌詞を載せたり。翌日くらいに容器を回収に行った時、掛け紙は半分くらいなくなっているので、喜んでもらえているのではと思います。お弁当を届けながら、何かできることはないか、常に考えています。 最近ではすごく安いお弁当もありますが、健康や楽しんでお弁当を食べたいというお客様をターゲットにして、適正な値段で販売することが大事だと思います。私たちはお客様のニーズがあって動いているわけで、そういう意味では消費者の意識や質が変わってくれば、世の中も変わるかもしれません。

高知県の魅力は、やっぱり人と自然。これだけ海と山があって自然がたくさんあるところはないないでしょう。子どもたちには、イタドリを採ったり、釣りに行ったり、そういう体験をさせたい。「ばあちゃんがつくった漬物がおいしかった」と思えるのは、実際に味わったことがあるからで、体験がなければわからないこと。子どもたちに何が残せるのだろう、と考える時があります。子どもたちは、なぜ勉強して、スポーツをするのか。いい学校、いい会社に入るためだろうか?人生の中で働く時間は長い。子どもたちがやりがいを持って社会に出ていくようになるには、働く大人が夢をもってチャレンジし続けないと、と思います。 昔はリヤカーを引いてラッパを鳴らして豆腐売りがきていました。そこで買う作りたての豆腐は感動するほどうまい。しかし、現在は食品衛生法で禁止されていて、作りたての豆腐を売れるのは47都道府県中、沖縄だけです。世の中には変えることを嫌う人はいますが、リスクをとっても変えていかないといけないこともあると思います。いつか、高知で豆腐の直販をしたいというのが夢です。

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